「関西学生映画祭トークセッション第三部」文字起こし

以下の内容は2019年11月16日に行われた第8回関西学生映画祭で行われた約30分のトークセッションの内容を録音し文字に起こしたものです。

トークセッションは計3回開かれていますが、今回はその第三部です。

文字起こしにあたり、可能な限り当時の雰囲気を維持できるよう努めましたが表現等を変更した部分も多々ございます。
現場にいらした方で表現に関してお気付きの点がありましたらご指摘下さい。

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自己紹介

シェーク・M・ハリス監督(以下、シェーク):(アラビア語での挨拶)

(会場笑い)

シェーク:中央大学経済学部から来ました、シェーク・M・ハリスです。
カミング、バック」の監督をしました。ありがとうございました。

(拍手)

カミング、バック

作品時間
約33分

あらすじ
「敬虔なムスリムになる」と、実家から戻ってきたシェークは言うが、明美はそんな彼が以前とは別人に思えてならない。

コメント
大学卒業の2週間前に撮りました。
当時感じていた事をなるべく率直に表現しようと思いました。

予告編はYouTubeで見られます。

団塚唯我監督(以下、団塚):「愛をたむけるよ」の監督と出演をしました、団塚唯我です。
慶應義塾大学と、あと映画美学校という映画学校があってそこで撮った作品です。
ありがとうございました。

(拍手)

愛をたむけるよ

作品時間
約27分

あらすじ
母を亡くした三戸兄弟はある日、母に似た女と運命的出会いをする。

予告編はYouTubeで見られます。

林龍之介監督(以下、林):「ポスト西入ル」っていう作品の監督とちょっと出演もしました、林龍之介と申します。
同志社大学というところで映画のサークルをやってます。よろしくお願いします。

(拍手)

ポスト西入ル

作品時間
約23分

あらすじ
京町家に佇むポスト。そのポストから西に進むと何かが起こるという。

各作品のこだわりと苦労

大矢哲紀委員長(以下、大矢):では今回の作品のこだわったところと苦労したところを順番に皆さんお願いします。

シェーク監督

シェーク:セリフ量がエグかったので、ほとんど演出とかせずに自分のセリフを覚えるので精一杯でした。こんな映画二度と作りたくないです。

大矢:終盤ずっと出っぱなしでしたよね。

シェーク:もう嫌ですよ本当に。

(会場笑い)

注:シェーク監督自身が主演も務めた。

団塚監督

団塚:セリフ量が半端なかったって言ってたんですけど、僕も結構会話劇だったのでそれも大変でした。

あとはロケ地選びが。ファミレスのシーンは定食屋を借りたんですけど、刺し身定食って書いてあるのを剥がしたりして、なんとかファミレスに見えるといいなと。
ロケ地というか…全部大変でしたね。キツかったです。

大矢:ロケ地の許可とかめっちゃ大変なんじゃないですか。

団塚:そうですね。カフェと定食屋は許可取って、外は全部ゲリラで撮って警察も2回来ました。大変でした。

(会場笑い)

林監督

林:警察が来て大変だったということだったんですけど、映画を撮ってる人はあることだと思って。
自分も今回の作品では警察は来なかったんですけど、外国人にすごい怒鳴られたりとかしたので。

そういうロケ地とか、所謂我々映画監督に環境は優しくないので、そこに対して苦労してるのは皆さんもかなと思うんですけど。

自分が出るっていうやつ自分もやってたので分かるんですけど、カメラを見なきゃならないけど自分がそこに行ったら画面から居なくなるんでそこのタイムロスとかも大変でした。

あとは寮を借りてたんですけど周りに配慮しなきゃいけない。
あそこは本当に築40年50年ぐらいの寮で、ベニヤ1枚みたいな壁の薄さで皆暮らしてるんですよ。だから目覚ましのシーンとか朝8時で横の子たちは寝てるからあんまりうるさくしないでくれと言われたり。そういうことの大変さはありましたね。

大矢:周りの環境との兼ね合いというか。

林:京都だったら神社寺仏閣が多いので、そうなると警察の目も厳しかったりするんですよね。
全然普通の公園だと思ってたら実はそこが歴史的重要地区で警察来て怒られたりとか。

大矢:頑張ってシュッと逃げて。
撮りたかったところで撮れなかったところがあったりとかは?

林:基本的に警察の方は優しいので。
こちらが下手に抵抗せずに頭を下げとけば許してくれるというところがあります。
本当に危ない、犯罪スレスレのこともやってたりするので、あまりね言えないですけどそういうことは。

質疑応答

大矢:せっかくなんで監督同士で他の方の作品とか、内容じゃなくても何か訊きたいこととかあったら是非是非質問していただいて。

団塚監督→シェーク監督

団塚:シェークさんに。
カットバックが延々と続くと思うんですけど、顔が片方に寄ってるじゃないですか。あれはカメラマンの判断ですか?

シェーク:あれですかね、中盤のずーっと僕が語ってるところですかね。
あれ撮影日が別でして。

団塚:そうなんだ。

シェーク:そうなんです。ヒロインの子が日付を1日間違えて来なかったことがあって。

(会場笑い)

シェーク:僕だけ撮ったので多分そこで位置がずれてあんな感じになっちゃった。

団塚:でも奇妙な感じが出てて良かったです。

シェーク:ありがとうございます。

シェーク監督→団塚監督

シェーク:じゃあ僕も…。
めちゃめちゃ演技が上手かったんですけど、あれは…。

団塚:僕ですか?

シェーク:ちょっと次の僕の映画に…。

団塚:良いけど全然…(笑)

シェーク:後で声掛けます。

注:団塚監督も自身が出演していた。

団塚監督→林監督

団塚:あとはあれってロケ地は京都?

林:あ、そうです。

団塚:京都の外のシーンは基本的には美術とかは変えない状態で撮影をしてっていう?

林:例えばポストですけど、あれめちゃくちゃビラ貼ってたんですよね。でもあそこは許可取ってたので怒られなきゃセーフって理論で全部剥がして。
ポストも実は使われてないポストなんですよね。だから「このポストは使えません」って貼ってあったんですけど、バレなければ良いかと(笑)

あとは大体そのまんま使ってますかね。京都駅も全部そのまんまですし、鴨川とかも。あれ鴨川の下水道の中に入ってるんですけど、臭いが本当にすごくて。映画だと伝わらないんですけど。
大体美術はそんなに変えてないですかね。

団塚:東京じゃ絶対に撮れないから僕は東京で撮れるものを撮ってみようと。
今の東京こんな感じだなーみたいなイメージでロケ地に選んでるし、なんかそういう撮る場所によって撮る映画も変わるんだなっていうのを思いました。

林監督→団塚監督

林:逆に質問なんですけど、東京ってあんなに明るいんですか夜って。

団塚:あの商店街とかは明るいですね。

林:めちゃくちゃ明るいなって思って。あんなに明るい商店街京都にないなって思いながら。

団塚:あそこはなぜか朝5時までずっとライトが全部点いてて「使える」って思って。
あのシーンが一番2人の関係性が近付くシーンにしたくて、映像的にもあそこが一番美しくしたかったのであの商店街を見つけて。

大矢委員長→団塚監督、林監督、シェーク監督

大矢:ロケ地とかは普段の生活の中で決めるタイプですかね?

団塚:僕はそうですね。

林:自分は京都一円走り回りました
この映画のためにチャリンコでずっと走って色んなとこ行って。
所謂京町家的なとこってなくなってきてて、限定的なスポットにはあったんですけど、そこら辺探しながら「良いじゃん」みたいな。

大矢:真逆ですよね。

シェーク:部屋の中から出ないっていう。

(会場笑い)

大矢:狭い範囲だからこそどう撮るかみたいなのとか。

シェーク:去年ずっと外で撮影してたんですけど、それでめちゃくちゃ色んな人に怒られたんで。

大矢:それでちょっと怖いなっていう。

シェーク:動物園でゲリラ撮影しててめちゃくちゃ怒られて反省して。

大矢:その時は動物園の人からやめてくださいっていう?

シェーク:動物園の人もそうですし、普通に…。

大矢:撮影とかしてたら結構普通の人が映り込んだりとかあるじゃないですか。そういうのってどうしてますか?

団塚:いや基本的にNGですね。商店街のとこも映ってたんですけどギリギリ共用範囲内かなっていう。
外のシーンは夜中の1時とかに撮ってるんですよ。「頼む」って言って。「本当にゴメン」って。住宅街だし東京だから人が通るから。「頼む1時からやらせてくれ」みたいなのありましたね。

大矢:カメラ目線にならなかったらセーフみたいな。
そういうのが気を使う人と全然大丈夫な人と色々いるなと。

林:この3つの映画ですごい思ったのは、みんなパスタを食べるんですよね。
苦学生に共通する食べ物なのかなって思ったり。どうしても映画の中に入れようとしてしまうのかなって。

大矢:無意識のうちに入れちゃうのかも知れないですね。

団塚:なんかお得感があるみたいな感じで。

シェーク:僕の一番まずそうだった…。

(会場笑い)

大矢:使い方も人それぞれで全然違うという。
せっかくなので観客の方とかで質問したい方とかいらっしゃったり。

観客A→林監督

観客A:すいません何度も。申し訳ございません。
林監督にお訊きしたいんですけども、映画で描かれた1970年は学生運動が盛んになっていて若松孝二監督なんかはテロリストの映画撮ってた時期だと思うんですけど、70年代を舞台にした映画を作ろうと思われたきっかけというか、思いなどがあればお聞かせいただけたらと思うんですけども。

林:元々歌謡曲とかが好きだったんですよ。ミリタリーとかも好きで、自分歴史学科ってこともあって。
色々歴史を遡ってる時に「学生運動」っていうのが一つの学生たらしめるものの象徴かなっていうのがありまして。そこを例えば「なんで学生運動を当時彼らはしてたんだろう?」と考えるわけです自分は。

その時に「本当に政治に対して思っていたのかな」っていうのが疑問としてあって、だから70年代っていうのを選んでるんです。学生運動自体は60年代が一番盛んなので、もう学生運動が終わってエネルギーの発散方法を他に見つけ始めた大学生達を描いてるんです。
エネルギーを発散させるものとして自分達は映画ってものがあったわけですね。でもその当時の人達は政治運動するってところにエネルギーを注いでいたと。

じゃあ例えば自分の映画は何が、生きることとか運動の行動理念として何が違うのかなっていうのを描きたかったという意味で現代からタイムスリップさせました。
こんなんで大丈夫ですかね。

観客A:ありがとうございます。非常に面白いご意見というか、面白かったです。ありがとうございました。

観客B→団塚監督

大矢:他に何か質問のある方。あ、お願いします。

観客B:はい団塚監督に質問です。
ラストシーンが好きで、二画面のとこから一画面になって、セリフがあって、タイトルが出るってとこでゾワッとしました。
で、二画面のところですごい画面に注目させられて、そこにタイトルが出てきてすごい良かったんですけど、二画面にした意図とかもし訊いてよければ聞かせていただきたいです。

団塚:撮影前から座り会話のシーンが2シーンあることが決まってて。多分撮り方を工夫しないともたないなと思ってたんです。

だから最初の座り会話のシーンは結構丹念にカットバックも使って割ってったんですけど、多分クライマックスであの割り方だとヒートアップしないと思って。
最後どうやって終われば演技を一番見てもらえる場所にカメラを置けるんだろうってずっと考えてて。上から撮ってもなとか、下からとかないしなとか。
ずっと考えてたら、「正面が一番顔の表情が見えるからどっちも正面にしちゃった方が観客が同画面で同時で追える」っていうのが結構良い案だなって思って。
ある程度新規性もあるかなと思ってあの割りに…、ちょっと半分遊びでしてみました。

観客B:ありがとうございます、斬新だったと思います。

観客C→林監督

大矢:他に何か質問のある方とか。

観客C:ポスト西入ルの監督さんに質問です。
相当小道具とかもこだわれてたと思うんですけど、大体準備にどのくらい時間をかけましたか?

林:一ヶ月ぐらいかなって思います、多分。
小道具自体はほぼ自分で準備したので、何が欲しくて何が要らないとか、時代考証含め色々準備したんですけど。
例えば襖も2,3時間ぐらいで作ったりとかしてるので。部屋自体が出来上がってるじゃないですか古い感じに。なのでそんなに困りはしなかったですね。カーテンは紅茶で染めて黄色くしました。
大丈夫ですかこんな感じで。

観客C:大丈夫です、ありがとうございました。

観客D→シェーク監督、団塚監督、林監督

大矢:他に質問ある方、是非是非今のうちに。
はい、お願いします。

観客D:3人に訊きたいんですが、3作品って作者一人の問題じゃないようなテーマで作られてると思ったんですよね。
私自身も作品作る時に結構個人的な問題をテーマとして描くことが多くて、皆さんは全体の何%ぐらい自分の中で問題として思っていて、映画を作ったことでどれくらい解決したのかっていうのがあれば。

団塚:むず!

(会場笑い)

シェーク:僕からですかー(笑)

団塚:ムスリムから(笑)

シェーク:作る前に本当に本当に色々あって、改めて自分を見つめ直さなきゃダメかもって感じになって。
ムスリムの問題は今まで自分の中で避け続けてきた問題だったので向かい合わないとダメかも知れないなと思って。
決めたら卒業二ヶ月ぐらい前だったんで、そこから急いでやってっていう感じでした。

その前本当に色々ありすぎて脚本も書けない、映像も撮れないみたいな感じだったんですけど、これ撮ってからは結構ドンドンやるぞみたいなやる気に満ち溢れてる感じだったので、撮って良かったです。救われました。

団塚:生きる死ぬみたいな問題だったり、母親を若くして亡くしてしまった人達とか、あとは分かりやすい貧困じゃない人達が東京には結構いっぱいいるんですけど、そういうのに興味が無意識のうちにあったと思うんですけど。
フリーターが友達にめちゃくちゃ多くて、なんかそういうものを上手く見てもらえるようにしたいなと思ってちょっとずつリンクさせていった感じですかね。

最初は恋愛映画のつもりで「肌色の恋をした」ってタイトルにしてたんですけど、撮り終わったら恋愛映画じゃなくなってたんでタイトルを変えて。

明確な「こうあるべきだ」とかはあんまり分からず撮ってたんで結局ラストもああやって、なんか続いていくのかなみたいな帰結になってしまったんですけど。
まあ撮り終わってからはなんかもう少し前向きで良いのかなって思ってますね。そんな感じです。

林:モラトリアム期って言葉が我々を非常に脅迫してきていて。何か変われ、何かを言えみたいな感じのことを言ってくるわけじゃないですか大学生になれば。
っていう時に自分が出した結論としては「やりたいようにやれば良いんじゃないの」ってことで、佐野も町田も自分のやりたいことをやる道に行くという終わり方をしたので…。

答えは出たような出てないようなよく分かんないですけど、結局これを世の中に出して、世界の全員が見たとしても答えは出ないのかなと思いますねこれは。
すみません良いですかこんなやつで。

観客D:ありがとうございます。

大矢:ありがとうございます。

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